代表取締役CEO / 産婦人科医

園田 正樹Masaki Sonoda

産婦人科医(東京大学産科婦人科学教室)。安心して産み育てられる社会を実現したいと考え、2017年に創業。2020年4月、病児保育支援システム「あずかるこちゃん」をリリース。
厚生労働省の健やか親子21推進協議会幹事、成育医療等協議会委員を歴任。

産婦人科医として理解を深め、よりよいシステムづくりに取り組んだ

私は産婦人科医として、妊娠・出産、がん、ホルモン異常などの患者さんに対応してきました。産婦人科医は女性が一生の中で出会うさまざまな問題や疾患に寄り添い対応する、やりがいのある仕事です。特に分娩は、家族の幸せな瞬間であり、人生の転機となる場面です。分娩直後に訪れるあたたかな空気は今も変わらず、この仕事を選んでよかったと実感する出来事のひとつです。その一方で、妊娠出産の中に予期せぬ病気の発症があります。これに迅速かつ正確に対応することにも、この仕事のやりがいを感じていました。

ある時期、虐待のリスクが高いとされる10代で望まない妊娠をされた方、経済的に余裕のない方、精神疾患を合併している方などの「社会的ハイリスク妊婦」といわれる方を多く診る病院で診療をしていたことがあります。そこで妊娠期からの支援やソーシャルワーカーを中心とした多職種の関わりの重要性に触れ、大学院では社会的ハイリスク妊婦の研究を行っていました。

こうした経験から、臨床医として目の前の患者さんはもちろん、より多くの方の予後やQOLが向上するよう産婦人科の仕組みを改善することも積極的に考え、取り組んできました。日本産科婦人科学会でも、各大学の教授はじめ多くの先生方とよりよい産婦人科診療を目指して活動させていただきました。

社会に直接アプローチするには、起業が近道だと考えた

このまま、産婦人科医として自分の大好きな臨床を一生続けていくものだと思っていました。しかし、大学院で公衆衛生について学ぶうち、その根幹である「社会の仕組みにアプローチし、社会全体を健康にする」ことに強く興味を持ちました。

研究によって公衆衛生に取り組むことも考えましたが、より速く、より直接的に関わっていくには何をすべきか……と模索しました。そこで、育児中の母親が何に困っているのか知るために、当直先で子どもをもつ褥婦さんに話を聞いて回りました。お話を伺う中で、私の心が最も動いたのは「子どもが病気がちで保育園をよく休むため、今回の妊娠を機に退職した」という話でした。

確かに、子どもは成長の過程でさまざまな感染症にかかります。当然のことです。しかし、子どもの風邪やインフルエンザなどありふれた感染症によって、母親が退職という人生の大きな選択をせざるを得ないという話に大きなショックを受けました。と同時に、病児保育という事業があることを知りました。

病児保育は、女性の就労支援に寄与し、かつ子ども支援や子育て支援の側面をもつすばらしい事業です。ただ一方で、保護者に知られていない、そして非常に利用しづらい仕組みであるという大きな課題を抱えていることもわかりました。この病児保育の課題を解決すれば、子育てをよりよくすることにつながると考え、起業を選択しました。

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